スターバックス:世界中で広がるグリーン・マーメイド
2015年4月6日
Akira Kondo
3月18日、スターバックス(NASDAQ: SBUX)は1992年ナスダック市場に上場して以来6回目の株式分割を実施すると発表した。分割は2:1で、一株の保有につきもう一株が与えられることになる。また実施日は来月4月8日、分割の権利を得るには3月30日のスターバックス株保有レコードが必要だ。現在の株価は約97ドルで、株式分割実施後は株価が半分になり、保有株数は2倍に増える。もちろん分割によっての企業価値の影響はないが、発表後の翌日の市場では株価は2%上昇した。
アメリカ・シアトル発祥のスターバックスはアップルと同じぐらい投資家に人気のあるグローバル企業だ。企業価値は世界最高のアップルの10分の1ほどだが、現在スターバックスは世界に約22,000店を展開し、とくにアジア圏での成長が著しい。もちろんそのアジア圏の中では中国での店舗数拡大が突出している。テクノロジーの最先端を走るアップルと比較することはできないが、意外にもスターバックスもテクノロジーに力を入れている企業の一つだ。 スターバックスとテクノロジー
アメリカではスマートフォンにスターバックスのアプリをダウンロードすれば、財布を出さずにそれを使ってコーヒーを購入することができ、ほかにカードの残高やメニューなども確認できとても便利だ。また、それは「スターバックス・リワード」プログラムとなっており、たくさんのスターバックス商品を購入した客は、「Welcome Level」、「Green Level」、「Gold Level」とマイレージプログラムのようにステータスが上がっていく仕組みになっている。もちろんステータスが上がるにつれて、ベネフィットも増えて行く。例えば「Green Level」ならコーヒーのおかわりが無料に、「Gold Level」では個人用のゴールドカードが手に入る。 ほかにも、今年からそのアプリを使用しドリンクのオーダーができるようになり、そのまま店でピックアップできるようになった(現在はまだ一部の地域のみのサービスとなっているが、今年中には多くの州で利用できるようになる予定)。また、スターバックス店舗内ではスマートフォンが自由に充電できるようになっている。従来のコンセントを利用しての充電ではなく、マグネット方式の充電なので充電コードを必要としなくとても便利だ。今年初め、スターバックスはスターバックス・ジャパンを傘下に収めることになり、このようなサービスが近い将来日本中に広がることになるだろう。 スターバックスとハワード・シュルツ
では、なぜ投資家にスターバックスは投資家に人気があるのか?まず一番はじめに思いつくのがスターバックスの創設者・CEO、ハワード・シュルツ(Howard Schultz)だろう。彼のコーヒーに対する情熱とスターバックスのサクセスストーリーは本にもなっているほど有名だ。ちなみに、北米以外で一番はじめに開いたスターバックス・ストアーは日本で、1996年に東京でオープンしたのが始まりになる。現在日本では1,072店が全国に展開している。その日本出店ストーリーは本にも感情的に書かれているほど、シュルツ氏は多くを語っていて、その時点で彼は日本でのスターバックス・ビジネスの成功を確信したほどだ。 またアメリカでは、昨年スターバックスはパートナー(スターバックスでは社員同士をパートナーと呼び合う)に大学で勉強するための奨学金をサポートすると発表し大きな話題となった。アメリカで働く70%以上のパートナーが大学の学士号を持ってなく、大学の学費がだんだん高くなっている中でスターバックスはその学費を負担するというプログラムだ(アリゾナ州立大学のオンラインでの学士号取得になる)。もちろんこのニュースは株価への影響はほとんどないが、スターバックスが社会に好意的な企業のイメージを世間に知らせた。ほかにも、スターバックスはパートで働くパートナーにもストック・プログラム(Bean Stock Program)を提供していることでも有名だ。パートナーが自社株を割安に購入でき、保有することによって会社の価値を知ることがでる斬新なプログラムだろう。 これらのプログラムを聞くとシュルツ氏はパートナー思いの優しいリーダーに見えるが、しかしストアーマネジャー以上のパートナーにはとてもハードルの高いノルマを与える厳しいリーダーになる。本には各ストアーマネジャーにはたくさんのタスクとノルマを与えることが一般的で、社員同士での競争も激しいと書かれている。また、シュルツ氏は政治にも大きな影響を与えるリーダーだ。数年前にアメリカで債務超過の問題がニュースになった時、シュルツ氏はいつになってもその問題を解決できない政治家たちに献金をやめるよう他の経営者に訴えたりした。また、世間では民主党を支持するシュルツ氏が近い将来大統領選に出馬するのではないかと噂されたほどだ。実際本人はそれを否定しているが、優しさと厳しさの両方を備えたシュルツ氏のリーダーシップはアメリカで支持されるのは間違いないだろう。また、またそのリーダーシップがスターバックスの世界で成功している要因だろう。 |
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スターバックスと成長
次に、スターバックスが投資家に人気のある理由は世界規模での成長だろう。1996年に北米以外で出店したのが日本なので、実際海外にストアーを開いて以来まだ20年しか経っていない。現在アメリカが10,737店と全体の約5割を占めていて、隣のカナダが1,457店、それらの地域を除くと約9,700店が海外となる。その海外の中でスターバックスが1,000店以上展開している国は日本と中国だけだ(その次に多いのがイギリスの806店舗、韓国の740店舗と続く)。日本は1996年に1号店が東京に開き、それから17年後の2013年に1,000店舗に達した。そして中国は1999年に北京で1号店が開いて以来、驚くことに14年後の2013年に1,000店舗に達し、そのすぐ1年後の2014年末には1,497店舗に到達している。以前スターバックスは2015年までに中国国内に1,500店舗を展開すると発表したが、その目標が達成されたことになった。 現在同じアジア圏に位置する中国、日本、韓国はスターバックスが海外で展開するストアーの約34%を占めることになる。そして、台湾やフィリピンなどを含めるアジア圏全体の店舗数では、スターバックスの海外店舗の50%を占めている。スターバックスはお茶の文化が浸透するアジア圏で大きな成功を収めたのは間違いなく、なにより日本での成功がアジア全体への拡大に繋がったと言えるだろう。スターバックスにとってアジア圏での成長がこれからも重要になるにちがいない。とくに中間層が増え続ける中国では、数年以内に2,000店舗に達し、スターバックスにとって巨大な市場になるだろう。 スターバックスと配当
他にスターバックスが投資家から好まれる理由として、毎年増配が続く配当金だろう。配当利回りは現在1.30%と高くはないが、投資家にとって配当に関して重要なのは、「配当額」、「利回り」、そして「配当額成長率」だろう。その中で一番重要と思われがちなのは「利回り」だが、実際に重要なのは毎年行われる「配当額成長率」になる。<「Power of Compounding: 72の法則と配当額増のマジック」参照> たとえば、日本でもよく知られるマクドナルド(NYSE: MCD)は、配当金額が毎年上がることでよく知られ、投資家の間では人気のある銘柄だ。マクドナルドは2003年から年平均で20%以上の増配を続けており、「72の法則」によると3年半で配当額が2倍になることになる。iPhoneで知られるアップル(NASDAQ: AAPL)も2012年から配当を開始し、年平均で10%以上の増配が行われ、これからも10%以上の増配が毎年続くことになる可能性が高い。このように毎年コンスタントに増配が行われる企業は投資家に大きな人気がある。 そしてスターバックスも毎年配当額をあげている企業の一つだ。2010年4月に配当を始めて以来、その平均上昇率は26%となっている。72の法則に当てはめると、3年以内で配当額が2倍になっている計算だ。ちなみに利回りは現時点で1.4%ほどだが、先ほども言ったようにスターバックスは配当額成長率が非常に高い銘柄になる。今年10月下旬に行われる第4四半期収益発表で例年通り配当の上積みが発表されると思うが、その増加率が注目されるだろう。 スターバックスと中国
面白いのが、アップルもスターバックスも中国マーケットに大きく興味を持っていることだ。中国には現在1,500店舗存在し、スターバックスのグリーン・マーメイドも町並みに至るところに見るようになった。特に近年では内陸部への出店も増え、中国全土への広がりが加速している。それと同時に、アップルストアーも内陸部への出店が加速している。上海から1,500キロ離れた重慶にはすでに3店舗が存在し、またそこからさらに300キロ西にある成都には新しく2店舗目が間もなくオープンする。先月、アップルがサンフランシスコ、ヤーバブエナ・センター(Yerba Buena Convention Center)で行った「Spring Forward」プレゼンテーションの冒頭に現れたアップルストアーは今年出来たばかりの杭州店だ。そこからでもアップルは中国市場に大変興味を持っていることがうかがえる。このように2つのアメリカ大企業がこれだけ中国に興味を持っているのは、これからも中間層が増え続ける中国市場を重要視している理由だ。 現在スターバックスは世界で22,000店舗を展開する。シュルツ氏はTIMEマガジン(2015年2月16日刊行)でアメリカに12,000店舗を展開するスターバックスは「ほぼすべてのコミュニティーにレンズを持っている」と語っている。それは、店舗を通して各地域の就業率から教育情報などを得ることができるという意味で、スターバックスはアメリカの経済活動などを国よりよく把握していることだ。いま世界中に展開しているスターバックスは、これからは中国を含め世界の各地域の経済活動なども把握するようになるだろう。 最後に、スターバックスはこれからも世界規模での成長を続け、さらに多くの地域でグリーン・マーメイド存在するようになるにちがいない。中国ではさらに多くのスターバックスが内陸部に進出するだろうし、インドにもこれから多くの店舗が展開するようになるだろう。1,000店舗を超えた日本市場もスターバック・ジャパンがアメリカ・スターバックの傘下に収まることになり、これからも新しい商品やサービスが提供されることは間違いない。そして、アメリカ経営の浸透により消費者とスターバックの距離がもっと近くなるだろう。近い将来、注文したキャラメル・マキアートのカップにあなたの名前が書かれている日が近いかもしれない。 Good to know… もしあなたがスターバック株をIPO時(1992年新規株式発行時)に10,000ドルを投資していたら、今その価値は1,776,753ドルになっている。ちなみに、日本円で約2億だ。 参照:2015年スターバック株主総会プレゼンテーション |
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