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2014年中国株式市場が55%の上昇率を記録
2015年1月10日
Akira Kondo

上海株式総合指数(Shanghai Stock Exchange Composite Index、以下SSE指数)の上昇が続いている。昨年からの原油価格下落に伴いその指数は年末に近づくにつれぐんぐん上昇し、2014年の上昇率は55%以上となった。アメリカS&P 500や日経平均がそれぞれ約12%、10%の上昇だったので、上海指数の55%上昇は驚異的に見えたに違いない。新聞やインターネットの経済欄では「中国経済減速」のニュースでにぎわっていたにもかかわらず、なぜ55%も上昇したのか?

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白い線がSSE指数のパフォーマンス。S&P 500(緑)や日経平均(赤)に比べると、昨年のSSE指数の上昇率は驚異的だ。Source: Bloomberg
まずSSE指数の構成を簡単に見てみよう。SSEは上海株式市場に上場したすべてのA株と B株の総合指数である。A株と B株の違いは、前者が人民元での売買になり、後者は外貨での売買になる(上海市場でB株の売買で必要な通貨は米国ドルで、深圳市場では香港ドルにて売買となる)。今年1月9日現在、990社がこのSSE指数に含まれている。このSSE指数は中国経済のバロメーターと言ってよいだろう。もちろんこのSSE指数は、中国にある約1,000社の将来の企業価値を総合したものなので、将来の中国経済を反映している。では、いったい何がこのSSE指数の上昇に貢献しているのか?

やはりルーブル急落を引き起こした、原油価格の下落が一番の要因だろう。2014年後半(7−12月)に原油価格が50%下落している間に、SSE
指数のパフォーマンスは約58%上昇した。ブルームバーグによると、中国は昨年末に4千億ドル規模のロシアとガス供給協定を結んだばかりで、両国は経済的、政治的にも交友を深めている。そのロシアから供給されるエナジー価格が下落傾向にあるので、中国にとってはそのニュースはポジティブに受け止めることができる。
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2014年8月頃から原油価格が下落するに連れて、SSE指数が上昇し始めた。Source: Bloomberg
日本と同じように中国も原油価格の下落は消費拡大につながるので、消費大国を目指す中国経済にとっては追い風になる。2011年の全国人民代表大会で前中国首相,温家宝、は低所得者から中級所得者を対象に所得配分を増やし、消費拡大を目指す政策をとることを明言した。 それに伴って、2012年の国内総生産(GDP)は7.5%に減速すると付け加えた(経済学的には、消費拡大は貯蓄を減らすことになるので、設備投資の減少にもつながる。そのため、コブ・ダグラス型生産関数によると、消費拡大でもたらされた貯蓄率の低下は生産量の低下にもつながり、GDPの減少につながる)。

変動の激しい原油価格下落はモノの値段、またはインフレ率を引き下げる効果がある。そのインフレ率の減少によって身の回りのモノの値段が下落し、消費行動を高めてくれる。もともとインフレ傾向が高かった中国にとっては、原油価格の下落は消費拡大やインフレ低下につながり歓迎される。これが実質GDPの下支えになり、将来の経済に楽観的な影響をあたえることになり、SSE
指数の大幅な上昇につながったに違いない。


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(左)中国のGDP成長率は7%前半まで減速した。(右)CPI 消費者物価指数は前年同月と比較した物価変動率を表した数字で、インフレの物差しとして使われる。 そのCPIも昨年は1%台に突入した。Source: National Bureau of Statistics of China
Picture2014年10月22日、世界中の新聞一面が中国経済減速のニュースでにぎわった。
数ヶ月前の経済活動が遅れて発表される毎四半期GDPの近年のパフォーマンスはどうだろう?2011年に10%を割って以来、成長率が下降傾向になっている。今年に入ってからは7%台の成長が当たり前になってきて、前年第3四半期の成長率は7.3%まで減速した。この成長率の鈍化は、テレビや新聞のニュースに出ているように、中国経済が変化を遂げていることを意味するだろう。しかし消費拡大を目指す中国政府にとっては、この7%台の成長率は織り込み済みかもしれない。消費拡大を目指すことは、貯蓄が減り、設備投資が減速することを意味する。今まで設備投資に頼ってきた経済だけに、2012年から中国政府が実行している 消費の拡大への構造変化は、一時的にGDPの減速を受け入れることになる。 来年度に成長率が6%台に突入するかは分からないが、昨年後半からの原油価格の下落がどれだけ消費に繋がるかがGDP押上の鍵になるだろう。ちなみにSSE指数は前回のGDP速報から35%以上上昇している。これは将来の先行きを示す株式市場が、今後の中国経済の回復を意味していると考えることもできる。世界中のエコノミストが注目する次回の中国GDP速報は1月20日になり、昨年第4四半期のGDP、そして2014年度の成長率が発表される。政府のターゲットの年率換算で7.5%にどれだけ近づけるかが注目される。

中国のGDPの約3割を占める輸出はどうだろう?今年の後半になって前年同時期よりも一段と輸出量が増えている。世界の工場はいまでも健在だ。しかし、ユーロ圏の経済縮小がこれからの中国経済に大きなインパクトになるのは間違いない。昨年後半からの原油価格下落に関わらず、輸入率は下降傾向にある。それが中国のインフレ率低下にも影響しているのは確かである。原油価格の大幅下落が落ち着き始めた頃には、今まで買い控えていたかもしれないエナジー関連商品が輸入増に繋がる可能性がある。今後数ヶ月の中国の輸出入は注目だ。

中国統計局が毎月発表しているPMI(Official Manufacturing Purchasing Managers’ Index、製造業購買担当者指数)は、景気の動向が左右される50パーセント付近にある。PMIは重要なマクロ経済指標の一つで、50以上は経済の拡大、50以下は経済が縮小していると表している。このPMIは先月のデータが翌月にすぐ発表されるので新鮮みが高い。昨年末からの原油価格下落により 製造業の生産拡大や新規発注が見込める可能性もあったが、昨年12月のPMIは50.1と経済の縮小が鮮明になってきた。とくに小型企業のPMI
データは先月に比べて2.1%低下して45.5となり経済の足を引っ張っている。
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(左)中国の輸出と輸入。昨年後半の原油価格下落に関わらず、輸入は下降気味だ。(右)昨年12月のPMIは50.1まで下がった。Source: National Bureau of Statistics of China
原油価格の下落が中国経済の追い風になっているのは確かかもしれないが、中国政府が目指す2014年の年率7.5%成長は一段と厳しくなっている。しかし将来の経済の価値を示す中国株式市場は昨年後半だけで58%上昇した。投資家が原油価格下落によって将来の中国経済を楽観的に見ているかもしれない。その原油価格の下落は国内のインフレ低下に作用し、2012年から中国政府が進める消費拡大に繋がるので構造変化の後押しになるだろう。また2015年は中国政府による大規模な金融緩和が行われ、中国経済の回復が見込めるかもしれない。それは世界の市場にも歓迎されるであろうし、世界経済に好影響をあたえるだろう。いま急上昇を続けるSSE指数にはそのようなポジティブな要素が入っているのかもしれない。しかし少しでもネガティブな要素が現れると市場はすぐにでも調整局面に入ることになるだろう。



Sources:

Bloomberg, “Russia, China Add to $400 Billion Gas Deal With Accord,” Nov. 10, 2014, http://www.bloomberg.com/news/2014-11-10/russia-china-add-to-400-billion-gas-deal-with-accord.html.

National Bureau of Statistics of China, http://data.stats.gov.cn/english/index.htm.

Shanghai Stock Exchange, http://english.sse.com.cn/information/indices/list/s/singleIndex/000001/const/index_const_list_en_50.shtml. 


 

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