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上海経済の今:広がる格差社会
2014年10月16日
Akira Kondo

中国版ゴールデンウィーク「国庆节(guo qing jie)」が終わり、今年3回目の上海に行くことになった。前回の上海訪問は蒸し暑い8月だったので、今回はとても過ごしやすい日々が続いた。しかしこれからは空気の悪い日も増えてくるので、マスク等も必要になってくる。

上海でのある一日、たまたま公共バスに乗って「金桥(jin qiao)」という外国人(特に欧米人)のベッドタウンに行くことになった。2010年にその近辺に住んでいたので、この時を楽しみにしていた。金桥の町柄はとても西欧的できれいだ。また、イギリスの学校があるので、午後3時を過ぎると紳士的な学生服を着た生徒が通りを歩いている。中国とは思えない光景だ。

しかし、すぐ隣には上海外高桥(wai gao qiao)自由貿易区
が構えているためトラックなどの通行がとても多い。また新しい高速道路の建設なのか、工事が終日行われている。とにかくその規模が大きいのでいったいどこまで工事が続いているのか想像がつかない。



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(左)上海外高桥保税区(Free Trade Zone)は外国籍の企業が群がる。日系企業の工場なども多数ある。しかしその工場には日本人の工場長や総経理が一人いるだけで、あとは中国人労働者になる。大きめの日経企業になると上海支部のオフィスを市内に構える場合がほとんどだ。(中)金桥付近の高速道路工事現場。上海ではまだまだ巨大プロジェクトが続いているが、この投資ペースがいつまで続くかは分からない。(右)スターバックス金桥店は相変わらず欧米の外国人客が多い。欧米諸国にとっては中国はまだまだ重要なビジネスパートナーだ。

本当に中国経済は減速しているのかと思う。私がいつも経済のバロメーターとしているのはスターバックスである。その店の活況度などを見ている。金桥は欧米人のベッドタウンなので、スターバックスの客もほぼ欧米人だ。午後3時過ぎだが店内はほぼ満員だ。 駐在員や長期主張者の家の客がほとんどで、このスターバックスは外国人による売り上げが半分以上占めるだろう。ここが彼らの「サードプレイス」、コミュニティーの場であり、オフィスにもなる。

Picture张江 テクノロジーパークはシリコンバレーを真似たように、国内外のハイテク企業が集まる。
上海は日系企業の存在が大きいと言われるが、欧米企業の存在もまったく負けていない。IBMやIntelなどのテクノロジー会社は上海「江张(zhang jiang)High Technology Park」に支店を構え、その地域の見た目はカリフォルニア州サンノゼの「シリコンバレー」そのものだ。サンノゼと同じように路面電車も走っている。ちなみに金桥からそのHigh Technology Parkまでは車で15分ほどだ。金融街の陆家嘴(lu jia zui)までも30分以内だ。中国は外国企業の受け入れが日本より格段に進んでいるかもしれない。また、欧米企業はこれからも中国を重要なビジネスパートナーとして存在を高めるに違いない。

金桥を出て次に向かったのは上海の歩行者天国「南京东路(nan jing dong lu)」。タクシーで行こうと考えたが、金桥付近で新しい地下鉄が開通したのでそれに乗車してみることにした。上海の地下鉄は今現在16号線まで開通している。私が上海に来た2010年はちょうど10号線が開通した時だったので(12、13、16号線は近年開通し、11号線は10号線以前に開通していた。14、15号線はまだ開通していない)、その発展は顕著だ。


Picture今年開通した上海地下鉄16号線。車内は緑のシートで統一されている。
今回乗った地下鉄16号線は金桥のある浦东(pu dong)地区から浦西(pu xi)地区の市街付近までの路線である。駅は真新しく、車内は緑のシートで統一されている。今まで金桥付近へは6号線しかなかったので、これでその6号線の慢性的な混雑は少なからず減るだろう。

南京东路に着いたら早速その歩行者天国を歩いた。相変わらずの混雑ぶりだ。もしこの通りに人がいなくなったら中国経済の崩壊している頃だろう。しかし、上海の経済はまだまだ堅調かもしれない。地下鉄に乗って一駅、浦东地区「陆家嘴」へ移動した。

ここはまさしく上海の金融街。この地域で働く人たちの収入は中国全体の平均収入より遥かに高い。数日前にこの地域にある外資系の会社でプレゼンテーション
をする機会があった。すべての中国人社員が英語を流暢に話し、会話に何一つ不自由がなかった。まさしくここにいるグローバルな人材が中国経済を引っ張っていると実感した。そのような人材がいる限り、中国経済の崩壊など絶対にありえないと思う限りだ。


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(左)景気が下降傾向でも南京东路はいつもにぎわっている。(右)上海金融街の中心「陆家嘴」。超高層ビルが立ち並び、ここで働く人たちの収入は高い。しかしすぐ下には工事現場で働く人たちの寮がある。彼らの給料はすぐ上にあるビルで働く人たちの給料には将来追いつくことはないだろう。
その陆家嘴を歩いている途中、思わぬものを発見した。台車に大量のモノを乗せて引っ張る人だ。道路の真ん中で必死に台車を引っ張っているように見える。環境汚染が問題になっている中国ではとても環境に良い試みだが、逆にここが上海のダウンタウンなのかと思う。

しかしその大量の荷物を載せた台車を見ながら大通りで信号待ちをしていれば、メルセデスやBMWなどの高級車があたりまえのように走っている。上海ではフェラーリなどの高級スポーツ車を目にするのもあたりまえだ。数年前だろうか、上海市にある复旦大学の学生寮にいる友人に会いに行った。そのとき学生寮の駐車場に入ろうとしている高級車ランボルギーニが、左右に止めてある自転車をよけながら前に進んでいた。その運転手は20代前半の学生のようだ。まず中国以外の大学構内では絶対に見ない風景だろう。

大都市上海では収入格差がとても表面に現れる。特に上海出身者と農村部からの移住者とではその格差は大きい。上海の女性はまずよほどのお金持ちでない限り、農村部の男性と結婚することはない。また、上海出身同士でも結婚の前提は男性の収入や資産に左右される(詳しくは「週末の上海「人民広場」:婚活イベント」)。ちなみにこの結婚の前提条件が上海の住宅バブルの要因の一つだ。

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(左)繁華街の交差点で、たくさんの荷物を積んだ台車を引く人。(右)复旦大学の学生寮にランボルギーニに乗って入ってくる学生。

この収入格差、または貧富の格差はそう簡単には縮まらないだろう。中国政府はこの課題をどうにかしようと対策を行っているが、13億人の人口を抱える大国では簡単にはいかない。金融街の陆家嘴では2つの経済が存在する。一つは近代的な高層ビルのオフィスで働く収入に優れた中国人が生み出す(サービス、service)経済。そしてその高層ビルの真下で埃にまみれながら働く、農村部から来た労働者が作る(労働集約的、labor-intensive)経済。

彼らは少しでも高い収入を得られるために、上海に来て毎日必死に働いている。しかし彼らは分かっているだろう。すぐ目の前にある高層ビルで働く人たちの収入には将来絶対にたどり着かないだろうと。まるで映画「華麗なるギャツビー(The Great Gatsby)」のひとシーンのようだ。


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