アップル株:過去第4四半期のパフォーマンスと2015年第1四半期の予想
2014年12月30日
Akira Kondo
アップル株の堅調な動きが際立っている。今年もあと2日間の取引を残すのみとなったが、アップル株は今日までで44%以上上昇した(米国12月29日時点)。今年10月に発売されたiPhone 6は好調な売り上げが続き、市場を活発にさせた。その間にロシア通貨ルーブル急落や中国経済失速などのニュースが出たが、それでもアップル株は大きな修正局面もなく、 投資家にとってはよい年になったはずだ。
アメリカのリテールセールは第4四半期が稼ぎ時といわれる。日本の各都市でもアップルストアーの存在感が際立つようになってきた。ルイビィトンやシャネルの高級リテールストアーの近くにアップルストアーも何気なくマッチしている。アメリカのサンクスギビングが終わると、年末商戦が始まる。どの店にとっても一番の稼ぎ時になるので、最新のアイテムを市場に投入したり、今年売れ残った商品を値下げして売り出すのが恒例だ。 テクノロジーのイメージがあるアップルだが、実際はリテールとして考える方が妥当かもしれない。アップルのリテールストアーはいまや世界中で人気スポットになっている。最新のアイテムが発売されると、店内が人で溢れ、またその状況がニュースになるのがあたりまえになった。人気のiPhoneやiPadはアップルにとってもはや年末商戦の主力商品だ。
では、アップルにとってその年末商戦がどれだけ重要かを見てみたい。下記のグラフを見ると一目瞭然だ。このグラフは2006年から2014年の四半期ごとのMac、iPod、iPhone、iPadの出荷台数を表している。新聞などに乗っているグラフは、年ごとになるので滑らかな線が多い。しかし、このグラフを見ると違和感を感じるだろう。 ギザギザのように、または突起のような線が横に続いている。特にiPhoneとiPodの線はそれが顕著に現れて、奇妙に見えるかもしれない。しかし、その突起になっている部分が第4四半期(4Q)の出荷台数だ。4Qは10月から12月にあたるので、年末商戦の真只中になる。 まずiPodを見てみよう。iPodはiPhoneが発売される前の主力商品で、その商品が市場に出回るようになった頃から、アップルの株価が上昇し始めた。年末商戦になると、クリスマスギフトや自身のためにたくさんの客が最新のiPodを買い求めた。しかし現在はスマートフォンの普及で、その販売台数は下落傾向にある。グラフの形はのこぎりの刃のように見える。 iPhoneはどうだろう。四半期ごとに見ると、やはりiPodと同じように4Qの販売台数が突出している。第3世代のiPhoneが市場に出た頃には、iPodよりも販売台数が上回るようになった。現在アップルのiPhoneは、全体の売り上げの半分以上を占めていることもあり、その人気ぶりが4Qの販売台数に現れる。2015年1月下旬に4Qの販売台数が発表されるが、その販売数は上昇トレンドを続けており、間違いなく過去最高の出荷台数を記録するはずだ。もしiPhone6の販売台数が6千万台を超えた場合、株価にも好影響をあたえるだろう。 iPadの販売台数も4Qがとくに突出している。しかし、最近よくニュースでタブレット市場の成長が鈍化していると聞く。グラフを見ると分かるかもしれないが、iPhoneの販売台数のスロープに比べると、iPadの販売台数が鈍化しているように見える。理由は色々あると思うが、一つの原因はiPadはiPhoneに比べて買い替えるサイクルが長いことだろう。4Qの販売台数は来月発表されるが、気になるところだ。 MacBook ProやiMacを含むMacintosh(Mac)の出荷台数の伸び率は緩やかだ。Mac製品は決して安くはないが、最近の人気は顕著に現れている。カフェにMac Bookを見かけるのは当たり前になってきた。ちなみに、カリフォルニア大学バークレー校の付近にあるカフェでは、Mac Bookを使っている学生がほとんどだ。しかし安くはないMac製品なので、買い替えの時期も長くなる。それでも、Macはアップルの主力商品なので投資家からも注目される。4Qは去年と同じぐらいの出荷台数になると思うが、サプライズもあるかもしれない。 次にアップルの売上高と純利益を見てみよう。一番最近の今年第3四半期(アップルの会計年度では第4四半期)の売上げは421億ドルで、ちなみに過去最高の売上げだった去年の4Qは576億ドルだ。iPodが人気だった頃の2005年4Qの売り上げが58億ドルだったので、ここ9年で4Qの売上高が10倍に増えたことになる。また、今年から発売されたiPhone 6/iPhone 6 Plusは値段の高い64ギガバイトのストレージ(容量)を中心に売れているとの噂が高い。また、高価なiPhone6 Plusにも人気が集まっているので、売上高の貢献が大きいだろう。来月に発表される4Qの売上高は、アップル史上最高額になるに違いない。
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アップル:
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一番最近のアップルの純利益は85億ドルで、ちなみにアップルの四半期最高利益は去年4Qの131億ドルだ。売上高は出荷台数である程度の予想はできるが、純利益の予想は簡単ではない。 純利益は簡単に言えば売上高から売り上げにかかった費用などを差し引いたものになる。しかし、その中にはテクノロジー企業の代名詞ともいえるR&D(Research and Development)のコストも含まれるので、その変化が激しいコストを把握するのは難しい。またR&Dへの投資は良好に見られ、来年発売されるApple Watchもその一例だ。そこで、テクノロジーセクターに属するアップルは、投資家は純利益よりもマージン(gross margin)を注視している。マージンは単に売上高から売り上げにかかった費用を差し引いてパーセンテージにして表したものだ。 必ずと言っていいほどテクノロジー企業が業績発表するとき、まず初めに売上高、次に純利益、一株あたりの利益(EPS)、そしてマージンを発表するパターンが多い。いくら売上高が高くても、また純利益が過去最高でも、もしマージンが予想より低い値にあったらその企業の株価は下がることも少なくない。アップルも過去にそのマージンの低下によって株価を下げる一つの要因を作った。 2011年4Q、iPhone 4Sが発売された頃にアップルのマージンはピークの47.4%に達した。その年からアップルのマージンは継続的に40%を超えることが当たり前になり、その後の株価上昇にも寄与するようになった。しかしiPhone 5が発売された2012年4Qには、マージンが30%台に低下し、当時アップル株の最高値の702ドルから300ドル後半まで下落した(今年の7:1の分割前の値段)。その当時は5四半期連続のマージン低下に苦しんでおり、毎回の業績発表ではその低調ぶりが投資家の悩みになっていた。
しかしそのマージンも底を打った2013年第2四半期頃から回復し始め、株価もまた過去最高値を目指すことになった。現在のアップル株は歴史上の最高値で取引されている。来年1月下旬に発表されるマージンは、40%を超える可能性もある。まず新製品のiPhone6/iPhone6 Plusがマージンのアップに貢献するだろう。今年から発売されたiPhone6は値段の高いストレージ(容量)が64ギガバイトを中心に売れている。また、iPhone6より高価なiPhone6 Plusの人気が高いこと。もちろん来月の業績発表の中で各商品の出荷台数を見てみないと分からないが、今回は値段の高い機種から売れている感じがあるので、マージンのアップは間違いないだろう。 最後にアップルのインターナショナルセールを見てみよう。現在アップルの商品は世界各国で売られていて、最新のiPhone 6/iPhone 6 Plusは115カ国で売られている。iPodが主力商品であった頃は、アップルの総売上に占めるインターナショナルセールは40%ほどだった。しかしiPhoneが登場してからは、その比率もぐんぐん上がり、今では海外での売上げは6割を占める。特にこれからは中間層が増えている中国での売上げが重要となってくる。ちなみに、今年第3四半期のアップルの売上げは、13億人の人口を抱える中国(香港、台湾を含む)が約14%占めている。供給量にもよるが、次回の業績発表の中でも、中国の売上げが取り上げられるだろう。
毎年4Qはアップルにとって重要な時期になる。もちろん他の企業にとっても同じだ。アップルはこれまで最新のアイテムをこの時期に必ず投入し、多くの売上げ、利益を得てきた。来月末に発表されるアップルの業績レポートは多くの投資家が待ちわびている。Apple Watchの発売日の発表もあるかもしれない。前回の業績発表では、アップルは2014年4Q(アップルの会計年度で2015年第1四半期)の売上げ635億ドルから665億ドル、マージンは37.5から38.5%を見込んでいる。前年同時期の売上げと比べると10%増で、マージンはほぼ同じだ。とても保守的な数字で、ウォールストリートではアップルの次回業績の予想はもともと当てにしていない。当てになるのはたくさんのアナリストによる予想平均値だが、次回のアップルの業績も予想を上回る数字になる可能性が高い。ちなみにアナリストの1株あたり利益の平均予想値は2.54ドルだが(12月29日時点)、間違いなく予想値以上の過去最高値をアップルは発表するだろう。 Source: Apple Inc. Akira Kondo is long AAPL. |
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