「Dividend Stock」、アメリカ株式市場でたくさん見つかる高配当銘柄
2017年2月1日
Akira Kondo
日本では非課税で運用できるNISA口座開設の人気が増えるのに伴い、株式から得られる配当や優待などに注目が集めるようになってきた。もはや配当は投資になくてはならない重要な要素となりつつある。海の向こうの世界最大の株式市場アメリカでも配当目的の投資家は非常に多い。株主優待など日本特有の文化はないが、アメリカの企業は常に「投資家First」で、自社株買いから配当増などを通して株主に利益を還元している。ちなみに高配当銘柄は「Dividend Stock」と呼ばれ、例えばアメリカ大手通信会社AT&T(NYSE: T)は4.7%の配当率を誇り人気銘柄だ。誰でも知っているスターバックス(NASDAQ: SBUX)も意外とDividend Stockと呼ばれたりする。利回りだけで見れば1.75%ほどだが、過去5年間の平均配当増額率はなんと20%以上に達する。このようにDividend Stockには二つの種類があり、どちらを選ぶかはその投資家次第だ。今回はその2種類のDividend Stockをたくさんの銘柄を交えながら説明したい。
Dividend Stock 1
まず初めに先ほど例に出したAT&Tは言わずと知れたDividend Stock(高配当株)で、配当目的で長期に保有している投資家も少なくない。もちろん同業種で競争相手となるVerizon Communication(NYSE: VZ)も高配当で、現在の利回りは4.3%となる。AT&TとVerizonはそれぞれ0.49ドル、0.58ドルの配当金を毎四半期投資家に支払っている。ここで、ちょっと疑問と思う方も出てくるだろう?なぜか利回りの高いAT&T銘柄の方が配当額は0.49ドルとVerizonの0.58ドルより少ないかと思う人も少なくないだろう。それは、銘柄の現在の値段が関係してくることがすぐにわかる。現在AT&Tは40.80ドルで、そしてVerizonは52.68ドルで取引されており、先ほどの配当額でその値段を割ると利回りが計算できる。 AT&T:(0.49 ✖ 4)➗ 40.80 = 0.048 = 4.8%
Verizon:(0.58 ✖ 4)➗ 52.68 = 0.044 = 4.4% これが一般的な利回りの計算になり、Yahoo!ファイナンスでもよくみる数字だ。ちなみに、配当額に「4」が掛けられているのは、アメリカでは毎四半期に配当が支払われるのが一般的で、年間配当を出すためには先ほどの毎四半期配当額に「4」を掛けないといけない。あまり景気に左右されない通信会社の銘柄は、配当利回りが高い時ほど割安になる傾向もあるので(配当額は一定で株価が下がる状態)、その時に購入するのが一般的で、またその傾向もあり下落傾向にも強い。もしあなたが100株のAT&T銘柄を保有していたら、約4,000ドルの投資($40.80x100株)で、年間196ドル得ることができる。日本円で22,500円になる。もしNISA口座で保有していれば、現地(米国)で税金を払うのみで、日本では課税されない。
Dividend Stock 2
次に初めに少しだけ紹介したスターバックスを見てみよう。スターバックスは今や日本人なら誰でも知っている言わずと知れたアメリカコーヒー店だ。日本に現在約1,200店舗あり、アメリカ本土では約15,000店舗、隣中国ではすでに2,200店舗以上になる。まだまだ成長が続きそうなスターバックスだが、その配当の成長率もものすごい。過去5年間の平均増配率は20%で、昨年の増配率は15%となった。ちなみに現在の利回りは1.75%だが(高配当のAT&Tと比べるとぱっとこない人も多いだろうが)、もちろん投資家の間ではDividend Stockと呼ばれている。ではなぜそう呼ばれるかというと、そのスターバックス株が毎年2桁ペースで配当増を行なっているからだ。スターバックス以外にも毎年2桁ペースで配当を増やす銘柄はさほど多くなく、もちろん先ほどのAT&Tでも毎年2.2%の配当増率しかない。 ではなぜ2桁ペースの配当増が重要なのか?それは、その毎年の増配率を「72の法則(Rule of 72)」に当てはめてみるとわかりやすいだろう。「72の法則」はある一定の成長率が続くと何年で元本などの数字が2倍になるかがすぐにわかる計算だ。公式は「72÷成長率」で、その成長率に先ほどのスターバックスの平均増配率を当てはめればいい。スターバックスの過去5年間の平均増配率は「22.6%」なので、「72÷22.6」で「3.19」という数字が現れる。この「3.19」の意味は、3年間と数ヶ月でスターバックスの配当額が2倍になることで、現在の年間配当額が1ドル(毎四半期0.25ドル)なので、3年数ヶ月後には2倍の2ドルになる計算となる。たったの3年数ヶ月で配当額が2倍になるなら、将来先ほどのAT&Tの年間1.96ドルよりも高くなる計算にもなる(もしAT&Tが今後5年間増配しなければの話で、実際は毎年0.01ドルずつ増配している)。
これがスターバックスの配当マジックだ。何より投資家にとって心強いのは、スターバックスが毎年2桁ペースで増配を実施していることで、もしその2桁ペースの増配が今後も続くことがわかっていれば、配当額が今後何年かで2倍になることが予想できる。投資に必要なのはどれだけ短い期間で、リスクを少なくしてリターンが得られるかで、このスターバックスの配当はすべてに一致すると言ってもいいだろう。これが、スターバックス株がDividend Stockと言われる理由だ。配当とは関係ないが、スターバックスは毎年店舗拡大やイノベーションを行なっている大企業なので、今後のビジネスの成長にも期待ができる。株価のPE(PER)が少し割高なのもあるが、ぜひ非課税のNISA口座や一般のポートフォリオに欲しい銘柄の一つだ。
もちろん毎年2桁ペースで増配が行われる銘柄はスターバックスだけではない。日本で人気のiPhoneメーカー、Apple(NASDAQ: AAPL)もその一つだ。Appleは配当を開始してからまだ数年が経つところだが、年平均で10%の増配を続けている。またバランスシートやキャシュフローを見る限り、今後数年は2桁成長が続くのも間違いないだろう。10%の増配が今後続くとすれば、「72の法則」に当てはめると、約7年後には配当額が2倍になる計算になる。もし、あなたがAppleを100株保有していれば、配当金額は現在の228ドルから、7年後に456ドルになっているはずだ(税引き前)。
他にどのような銘柄があるだろう?航空機メーカー、Boeing(NYSE: Boeing)も配当で人気の銘柄だ。昨年12月にBoeingが30%の増配を実施し、毎四半期の配当額は一気に1.42ドルとなった。年間で5.68ドルの配当額となり、利回りも一気に3.6%に上昇した。もちろん投資家の間では増配の期待も高かったので、株価も上昇に向かった。ちなみに過去5年間の平均増配率は27%で、もしBoeing株を保有していれば、2年半で配当額が2倍になる計算になる。短期間で配当が2倍に増えて、株価も上昇して投資家にとっては嬉しいかぎりだ。もちろん景気敏感株なので、景気の影響を受けて減配ということもあり得ることは承知しておきたい。
Dividend Stock 3
高配当のAT&Tと高配当増のスターバックスの間にある銘柄もたくさんある。どちらかというとこのカテゴリーに当てはまる銘柄の方が多いかも知れない。バイオ薬品銘柄のPfizer(NYSE: PFE)やBristol-Myers Squibb (NYSE: BMY)がその一例だ。それらの銘柄はもともと高配当で、常に2.5%から3.5%の利回りとなっている。スターバックスなどのように毎年の増配率が二桁を超えることはあまりないが、それでも毎年数%の増配を行なっている。日本の薬品メーカーの第一三共(4568.T:JP)や武田製薬(4502.T:JP)と似たような感じだろう。しかし、アメリカ・バイオ薬品&テクノロジー関連銘柄の方が配当を通しての株主還元はまだまだ上手だ。中には、近年アメリカバイオテクノロジー大手Abbott Laboratories(NYSE: ABT) からスパンオフしたAbbVie (NASDAQ: ABBV)はすでに高配当を実施し、利回りは現在約4%で(2017年1月20日時点)、すでに増配も行なっている。もともと景気にあまり左右されない薬品関連銘柄で、毎年コンスタントに増配を行なってくれるアメリカ・バイオ薬品&テクノロジー銘柄は投資家にとって保有価値が高い。 さらに、どのような高配当銘柄があるだろう?薬品銘柄と並んで人気なのが飲料・食品関連のCoca-Cola(NYSE: KO)、PepsiCo(NYSE: PEP)、 Kellogg(NYSE: K) 、そしてProctor & Gamble(NYSE: PG)などだろう。これらの銘柄もあまり景気に左右されない特徴があり、リスク嫌いの投資家には人気が高い。何より毎四半期に安定した配当が得られることが彼らの長期保有に繋がっているだろう。他にも、Altria(NYSE: MO)やPhillip Morris(NYSE: PM)は世界各国でタバコ増税などの逆境にさらされているにもかかわらず、毎年高配当を続けている。
以上色々なアメリカ高配当銘柄を簡単に説明してみたが、アメリカ高配当銘柄に興味を持ち始めた方も多いだろう?もちろん外国銘柄なので株式や配当から得る利益は現地(アメリカ)での課税対象となるが、たくさんの高配当が毎四半期に得られるアメリカ銘柄は、特に国内非課税になるNISA口座での運用に興味を持った方もいるのではないか。何より先行き不安な日本経済の中で日本円だけを保有するよりも、グローバル通貨であるアメリカドルを株式やその配当金で得て保有するのも投資の分散化に繋がるに違いない。そして為替のリスクもあるが、停滞し続ける日本経済とイノベーションが進み堅調に推移するアメリカ経済を考えるとアメリカドルを保有する方が健全に見えてもおかしくないだろう。そのアメリカドルを保有する過程で高配当銘柄が多いアメリカ株式銘柄をポートフォリオに加えてみてはいかがだろうか?
*株価、利回り、為替は1月10日ごろの値
*Economics Universe及びこの記事は投資全般についてのアイデアであり、個々の株式銘柄を推奨しているわけではありません。株式投資は自分自身にあったリスクを考えて、自身の意思で売買してください。またEconomics Universeでは日本語で記載がない場合は英語での注釈が優先されます。 Investing contains risks. Please consider risks of investing when investing. Economics Universe is not responsible in any loss of your investment. |
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