アメリカ一番人気のETF: SPDR S&P 500 「SPY」
2015年1月21日
Akira Kondo
アメリカで一番人気のETFは個人投資家から機関投資家の間で毎日たくさん取引されている「SPDR S&P 500 Trust」だ。 そのティッカーシンボル「SPY」は、S&P500と連動したアメリカ500社からなるマーケットバスケットである(それぞれの日本の株価に4桁の番号が付いているのと同じで、アメリカの個別株、ETFなどはアルファベットで表している)。アップルやスターバックス、そして工事現場などでよく見るCATロゴが付いた黄色い重機 を販売するキャタピラー社など、ほぼ頭の中に浮かぶアメリカ企業はこのS&P 500に含まれる。なぜこのS&P 500に連動するETF「SPY」が一番取引される銘柄なのか?
それは、S&P 500は投資家にとってのベンチマークだからだ。アメリカ中にいるポートフォリオマネージャーはとにかく毎年S&P 500よりも高い成績を上げようと顧客の資金を運用している。それは個人投資家にとっても一緒で、S&P 500よりも高いパフォーマンスを残すことが毎年の目標になる。2013年と2014年のS&P 500のパフォーマンスはそれぞれ29.6%と12.4%で、2009年中盤からのブルマーケットが続く形となった。そのS&P 500と連動するのがSPDR ETFのSPYだ。 毎年アメリカの投資家はS&P 500よりも高いパフォーマンスを得るために、経済状況や個々の企業の収益を見ながらポートフォリオを一年間運用することになる。その中のポートフォリオ構成で必要になるのが、ある一定数の個別株を組み入れ、どれだけ市場から発生する以外のリスク(Unsystematic Risk)を減らせるかが重要になる。ある一定数とは、10社の株を持っているより、30社の株を持っている方が分散投資によってリスクを軽減できるということで、その数は投資家によって様々だ。莫大な資産を運用するポートフォリオマネージャーなら50以上の個別株を運用しているし、個人投資家なら多くても20から30の個別株のポートフォリオ構成になるだろう。
しかし、毎年そのS&P 500以上のパフォーマンスを得ることができるポートフォリオマネージャーはごくわずかだ。何十年以上もポートフォリオを運用しているプロでも、その「ベンチマーク(S&P 500)」を上回ることは至難の業で、個人投資家にとっては、運用額にもよるが、毎回トレードをするたびに手数料を払わないといけないので、その額だけでもポートフォリオのパフォーマンスに大きく影響する。投資家にとってベンチマーク以上のパフォーマンスを得ることが、どれだけ早く将来の資産の目標額にたどり着けるかを意味する。
「72の法則」によると、例えば毎年ベンチマークが10%上昇すると、約7年で資産が2倍になることになる。もし投資家がそれを上回る、毎年15%以上のリターンを得ることができたらどうだろう?その投資家は約5年で2倍の資産を得ることになる 。投資はどれだけリターンを得るだけでなく、どれだけ早くそのリターンを得ることが重要になる。しかし、先ほども言った通りベンチマーク以上のパフォーマンスを得ることは思っている以上に難しい。また、毎年コンスタントにベンチマーク以上のパフォーマンスを上げることはさらに難しくなる。 そこで、ベンチマークと連動するSPYが投資家の間で重宝される。SPYを保有している限り、ベンチマーク以下のパフォーマンスを得ることがないので、毎年マーケットと同じリターンを得ることができる。ちなみに、もし2009年からSPYを保有していたら、今日までで約120%のリターンを得ることになる(米国1月20日現在)。もちろん2009年に1,000ドルSPYに投資していれば、今日までに2,200ドルになっている。約五年間で投資額が二倍以上になっているので、72の法則によると平均15%のリターンを毎年得ていることになる。 ちなみに、その過去5年のSPYのパフォーマンスを見ているだけで、投資家はなぜたくさんの手数料を払って様々な個別株を買う必要があるのだろうと思うだろう。そこが重要なポイントになる。投資家はSPYより高いパフォーマンスを得たいために、たくさんの手数料を払って、たくさんの時間をかけて各企業のバランスシートの勉強をしている。しかし、SPYだけに投資している人は、小額の手数料を払って、ただじっと見ているだけでいい。 SPYの人気はただ保有しているだけでマーケットと同じパフォーマンスを得ることができるからだ。初めて株式を購入する人や、仕事で投資について勉強する時間がない人、アメリカ株に投資したい人はこのSPYがおすすめだ。また、マーケットと連動するSPYを購入するなら、一ヶ月おきに資金を分けて購入するのがいいだろう。それにより、購入タイムのリスクを下げることができるし、平均した購入コストを得ることができる。昨年末に日本の年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も海外株式を購入することを発表した。このSPYも間違いなくGPIFが将来保有する海外株式のオプションの一つになるだろう。 S&P 500と連動する SPYはアメリカ投資家からだけでなく、世界中の投資家からも人気がある。先行き不安な日本経済の中で国内株式投資をするだけでなく、堅調に推移するアメリカ経済を引っ張る500社の大手企業がバスケットに入ったSPYを保有する価値はとても高いだろう。 ちなみに、Economics Universeは毎年ポートフォリオのパフォーマンスを公開している。そのポートフォリオ構成は10社から15社の米国個別株を選択し、2008年以降毎年ベンチマークよりも高いパフォーマンスを得ている。 |
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