Tencent(テンセント):中国のWeChat人気に迫る(2/2)
2016年8月27日
Akira Kondo
WeChatでなにができるの?
滴滴(Didi) 今年の中国の旧正月では紅包が大人気となったが、他にもたくさんWeChatが中国人の日常生活に変化をもたらした機能がたくさんある。まずその一つが、「滴滴(Didi)」だ。滴滴は中国版Uberで、今月Uber中国が滴滴に身売りしたことで大きなニュースにもなった。両者とも自動車配車サービスを提供し、アメリカや中国では利用者が急激に増えている。さてその滴滴だが、ほぼ全ての中国本土の都市で利用でき、タクシーに比べても安価に移動でき、そして車内が清潔なこともあり多くの人に愛用されるよになってきた。 何より利用する配車のドライバーの情報やその評価もオーダーする前にわかるので、滴滴のサービスは道で見つけるタクシーより安全に利用できる。とくにグローバル都市の上海では、滴滴で呼んだ車がアメリカの高級電気自動車テスラ(Tesla)だったりということもある。そして、乗車後は現金ではなくそのままWeChat上で決済が行われるのでとても便利だ。
もともとこの滴滴の配車サービスは既存のタクシー会社に競合するため乗車賃がとても割安で、プロモーションを利用してそのタクシーよりも半額以下で乗ることができた。しかし、今月Uberとの合併により、最近の乗車賃が大幅に上がり不満の声も聞こえるが、それでも快適に利用できる滴滴はこれからもWeChatで頻度に使われるだろう。
微信支付(WeChat Pay)
今の中国の若者は現金を持たない傾向が顕著に表れている。昨年あたりから中国にあるどの店でも「支付宝(中国名:Zhifubao、英語名:Alipay)」というサインをよく見るようになった。近年よく耳にするデジタルペイメントだ。彼らはいつも新しいテクノロジーを受け入れ、それらを日常生活にすぐ適応するのが得意で、支付宝はその日常生活を変えた一つだろう。 欧米のようにプラスチックのクレジットカードを使う文化があまり中国にはなかった。2000年頃から若い ホワイトカラーの人たちがクレジットカードを持つようになり、いま日本に来る中国人の観光客が银联(中国名:Yinlian、英語名:Union Pay)のロゴの入ったのが中国発行のカードを持っている。しかし、近年は中国国内ではアリババ・グループ(Alibaba Group)の支付宝が現金やクレジットカードを押しのけてデジタルペイメントの一番手となった。
その支付宝を追従する形で現れたのが、「微信支付(中国名:Weixin Zhifu、英語名:WeChat Pay)で、アメリカ・アップルのApple Pay(アップルペイ)とほぼ同じだ。微信支付もApple Payもクレジットカードや銀行カードをそれらのアプリに読み込み、スマートフォンを店にあるリーダーにかざして、指紋認識後に決済が行われる。
中国でもスターバックスやヒルトン・ワールドワイドなどアメリカ系の企業を中心にアップルのApple Payが使えるようになってきた。(左)中国の最西部に位置する都市、乌鲁木(ウルムチ)に新しくできたヒルトン・ウルムチではApple Payが使える。(中)上海のマクドナルド店舗でもApple Payがセルフオーダーで使えるようになっている。ちなみに、このセルフオーダーは英語にも対応しているので外国人にとってもとても便利だ。(右)いま中国にあるどの店に行っても「支付宝ALIPAY」のサインを見るようになった。ほとんどの若者は支付宝など多くのモバイル決済サービスを日常で使うようになり、中国はますますキャッシュレス社会に向かっている。
微信支付の便利なところは、やはり現金を持たなくていいことと、そしてどのような小さな店でもクレジットカードは使えないが、微信支付は使えるという所が多いことだろう。ちなみに使い方は、まずWeChat上の微信支付を起動して、スクリーンをQRコードにかざす。そうすると払う金額の画面が出てくるので、店員に言われた値段を自分でタイプする。それで指紋認識(iPhone 5S以降の機種の場合)を終えると決済が行われるので、サインもする必要もなくとても便利だ。 こうしてみると、日本の現金社会を考えると、中国の方がスマートフォンの使い方が斬新に見えるかもしれない。もはや中国の若者の間では現金を財布から出したり、クレジットカードをわざわざスワイプしたりすることは古い習慣で、店員の手を一切触ることなくスマートフォンをかざして決済するのがあたりまえになっている。
ちなみに、微信支付以外では、Alibabaの支付宝やアップルのApple Payが主流で、前者は3分の2のマーケットシェアを持つ。その次に18%のマーケットシェアをもつ微信支付だ。これからそのマーケットシェアがどうのように変わっていくかはわからないが、WeChatの必要性は今後も増える傾向が続くだろう。 他にWeChatの中でできることは、お金を他の人に移したり(この機能は意外に便利で、例えばレストランで友達と割り勘をするときなど、現金を財布から出さずに、WeChat上で金額をタイプしてお金を移すことができる)、電気料金を払ったり、金融商品の売買もできる。まさに、中国ではWeChatが生活の一部になってきているのが実感できるだろう。 このWeChatは中国以外の地域でも使われている。とくに、中国に仕事や旅行で来た外国人は、LINEやフェイスブックが使えない国ではWeChatが連絡手段になる。そして、彼らは帰国した後もWeChatを使い続ける傾向が高い。日本ではLINEが多くの人に使われているが、世界規模で見るとFacebook MessengerやWahtsAppの利用者がほとんどだ。しかし、LINEが先月ニューヨーク市場に上場したように、WeChatも間違いなく世界のマーケットシェアを広げてくるだろう。 そのWeChatを運営するTencentだが、今や中国最大の企業になろうとしている。時価総額はすでに約2,400億ドルで、現在トップの中国移動(英語名:China Mobile)の2,550億ドルに迫っている(2016年8月26日現在)。そのTencentを追っているのが、Jack Maが率いるAlibaba Groupで2,323億ドルだ。WeChatが登場する前に人気だった人人网は6億ドル程度。ちなみに、先月ニューヨーク市場に上場して話題になったLINEの時価総額は88億ドルほどで、ソーシャルネットワークでトップを走るフェイスブックは3,558億ドルにもなる。
世界一のスマートフォン市場の中国を圧巻するTencent。これからますます生活に便利な多くの機能がWeChatに追加されていくだろう。ソーシャルネットワークの域を超えたWeChatはまさに新しいテクノロジーをいつも追い求める中国人にとって必要不可欠なアプリとなっている。 |
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