スターバックス・上海:モダンな上海人の大好きなサードプレイス(Page 2/2)
2016年3月21日
Akira Kondo
スターバックス・上海
理論的に、経済活動が減速すると、消費者は金を使うことを減らす傾向がある。それは間違いなく正解で、現在中国の消費者は財布の紐を強く閉めている。しかし裕福な上海人にとっては、中国経済の減速に関わらず高価なスターバックスのコーヒーや最新のiPhoneなど、モダンでファッショナブルなモノをいつも求める傾向が高い。実際、上海の地下鉄に乗ってみると、最新のゴールドやローズゴールドのiPhone 6Sや6S Plusを手に持っている乗客が多く、また中心地にあるスターバックス店では人気のフラプチーノを求めて長い列に並ぶのも当たり前だ。 上海人はとにかくしゃべることが大好きで、そして購入したばかりの最新のアイテムを見せびらかす習慣がある。例えば、最新のiPhoneの販売日になると、多くの上海人がアップルストアーに行列を作るのが当たり前の光景になっている。 また彼らは中国経済の減速に関わらず海外旅行を楽しむ傾向が増えていて(裕福な上海人はタイや韓国などの安価でいける国々にはすでに旅行済みで、近年では先進国の日本、アメリカ、オーストラリアなどに行く傾向がある)、上海人たちはその海外に行くためのビザも簡単に取得できる。その反面、 中級都市から上海に出稼ぎに来て高所得を得ようとしているホワイトカラーたちは、毎日一生懸命働き、一定の給与額に達し、税金を支払った証明などをして、やっと日本へのビザを取得することができる。 アメリカと同じように、スターバックス中国もスターバックス・リワードプログラムのサービスを提供している。スターの取得方法はアメリカのプログラムとは異なり、中国ではスターバックスの商品を毎50元消費するたびに一つのスターを得ることができる。よって、一年以内に5スター取得、または250元を消費するとグリーンレベルに、25スター取得、または1,250元の消費でゴールドレベルに到達することができる。ゴールドレベルになると、スターバックスから特別なゴールドカードが送られ、また10ドリンク購入ごとに1ドリンクが無料で提供される。
所得が高く見せびらかすことが大好きな上海人にとっては、スターバックスで年間1,250元の消費は難しくなく、彼らの多くはすでにゴールドカードを取得している。加えて、上海人にとって、その金額に必要なコーヒーを飲むことではなく、ゴールドカード取得することに意味がある。そして、スターバックス店内で そのキラキラしたゴールドカードを後ろに並んでいる人たちに見せつけることが重要だ。上海人の面白い行動の一つとして、彼らは必ず一番大きいVentiサイズのドリンクを注文する。そのサイズは彼らにとってとても重要になる。もちろん隣に座っている客のドリンクより小さいものはありえない考えだからだ。ちなみに、人気のVentiサイズのグリーンティー・フラプチーノ(日本の抹茶クリームフラプチーノ)は36元で、上海人の1日あたりの所得の8分の1以上になる。 時間帯や場所にもよるが、上海のほとんどのスターバックスの店舗はいつも混雑していて賑やかだ。どちらかとうるさいと言った方がいいかもしれないが。先ほどにも述べたが、とにかく上海人はしゃべることが大好きで、その声は甲高い。彼らは中国本土で一般的に使われる普通語を使わず、いつも上海語でしゃべっている。それも、上海人を誇りに思っているからだろう。そして裕福な上海人に混じって、農村部や中級都市から出稼ぎに来て成功したホワイトカラーの人たちもスターバックスのコーヒーを楽しんでいる。オフィス街の店舗だと、そこが会議や交渉の場となったりもする。まさにスターバックスは彼らにとってファッショナブルでモダンな場所といって違いないし、彼らが探し続ける生活に必要なサードプレイスとなっている。
そのようなダイナミックな商業都市では、スターバックスはいつも競合相手を迎え入れなければならない。都市のあちらこちらで多くのカフェが存在するのが当たり前で、パシフィク・コーヒー(Pacific Coffee)やコーヒービーン&ティーリーフ(The Coffee Bean & Tea Leaf)などのグローバルチェーンや個人経営などのとても落ち着いたカフェなどが街の至る所に見られる。もちろん、スターバックスのすぐ隣にほかのカフェがあるのも当たり前の光景だ。その中でも目を引くのが、テイクアウト専門で多彩なミルクティーのラインナップを揃えるCOCOだろう。街中を歩いていると、橙色のCOCO店舗を嫌でも目にするに違いない。特徴は甘くて、プリンが入ったミルクティーやアイスレモンティーなどとにかく人気で、そして何より価格が手頃なことだろう。例えば、人気のCOCOバブルミルクティー(タピオカ入り)はたった8元だ。
面白いことに、今年からいくつかのCOCO店舗はCOCOカフェのブランドを展開し、そしてその数は日に日に増えている。そのCOCOカフェはスターバックスも採用しているサーモプラン(Thermoplan)を使ってコーヒーを提供しているので、新鮮なコーヒーアロマがいつも周りに伝わっている。ちなみにCOCOカフェが提供するアメリカーノとマキアートはそれぞれ8元と15元だ。スターバックスのそれぞれの商品の値段は22元と31元で、COCOカフェの値段の安さが実感出来る(スターバックスのマキアートはキャラメルが付いている)。さらに、いくつかのCOCOカフェを提供している店舗では、椅子の付いたカウンターテーブルも提供しているので、座って飲むこともできるようになった。もともとCOCOは上海人も含めた多くの中国人から好まれている店なので、常連客が多く、ミルクティーに加えてコーヒー関連商品の販売はその勢いをもっと加速させそうな雰囲気が漂っている。その反対に、スターバックスのドリンクはとにかくプレミアムな価格になる。例えは、そのキャラメルマキアート(ホット、トールサイズ)は31元。その31元があれば、オフィス街の食堂で数種類のおかずが購入できるし、マクドナルドではフィレオフィッシュセットが二つ注文できる。 上海を含めて、中国本土にあるスターバックスで中国人の消費者を観察することはとても興味深い。いまスターバックスの店舗でコーヒーを飲んでいる人たちは 間違いなく所得の高いミドルクラスの人たちで、その数は今後中国経済が減速しても増え続けるだろう。今日では 長沙、重慶、成都など内陸都市にもスターバックス店舗が広がっている。それらの地域の一人あたり所得はまだまだ上海のように魅力的ではないが、それでも多くのミドルクラスの人たち日々増え続け、スターバックスに足を運んでいる。もちろん彼らもスターバックスが提供するモダンなひと時を楽しんでいるに違いない。 上海に限らず、中国の多く都市で増え続けるミドルクラス、そしてモダニティーを求める消費者を迎え入れるために、スターバックスが今後も中国本土全体に店舗を拡大する理由もうなずけるだろう。
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2015年11月12日に掲載された「Starbucks in Shanghai, China: Modern Shanghainese Favorite Third Place」より翻訳
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Starbucks China Fact 4:
以前、天安門で知られる世界遺産・故官にスターバックス(2000年開店)があったのはご存知だろうか?しかしながら、中国で最も象徴とされる場所になぜアメリカのカフェがあるのかと世間の大きな批判もあり、その店舗は2007年に閉店した。
Starbucks China Fact 5:
天安門でのスターバックスのこともあってか、それ以降に新しく開店した店舗の幾つかはとても斬新で、中国の歴史や文化を尊重した作りになっている。たとえば、成都の観光地、宽窄巷子(Kuanzhaixiangzi)にある店舗は、スターバックスが現地の文化と融合した外観で、中国人観光客にもとても人気がある。ぜひ一度は訪れてみたい場所だろう。
(写真)成都の観光地にある、中国文化や歴史を感じる外観のスターバックス宽窄巷子(Kuanzhaixiangzi)店。
スターバックス・成都
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