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ジム クレイマー:アメリカ人気投資家の投資術
2014年12月24日
Akira Kondo

PictureJim Cramer's Real Moneyは日本語訳版も刊行されている。英語版のみのJim Cramer's Get Rich Carefullyは去年刊行されたばかりで、最新のクレイマーの投資術が満載だ。
アメリカのテレビでひときわ目立つ人物がいる。いつも「BOOYAH!」と叫んでいるCNBC「Mad Money」ホスト、ジム クレイマー(Jim Cramer)だ。彼はハーバード大学院法学部に在籍中に株式投資に興味を持ち始め、卒業後 ゴールドマンサックス証券に入行し、数年後にはThe Street.Comを創設した。現在、彼はThe Street.Com社の共同創設者、チェアマンでもあり、投資についての記事を毎日発信している。ウォールストリートで働いている人や全米の投資家は彼のことは絶対に知っているほど著名投資家だ。また、クレイマーがThe Street.Com Action Alerts Plusで運用している3億円規模の慈善信託「Charitable Trust」は、毎年得た利益を寄付することでよく知られている。

ちなみに、私はクレイマーの大ファンである。私自身も大学時代から投資に興味をもち、彼の書いた本を何度も読んだり、CNBC「Mad Money」を毎日見ていた。大学4年生の時は、憧れであったゴールドマンサックスで働きたいと思い、面接を受けに東海岸に行ったこともある。残念ながら2回目の面接を通ることができなかったが、その後も個人で彼の投資術をもとにポートフォリオを運用している。毎年の目標はクレイマーと同じく、マーケット(S&P 500)よりも高いパフォーマンスを得ることである。たくさんいる有名な投資家の中で、 私は10年以上彼の投資術をベースにしてポートフォリオを構成している。

しかし、著名な投資家だったら、ウォーレン バフェット、ジョージ ソロス、ジム ロジャースを筆頭にたくさんいる。なぜ、ジム クレイマーがいいのか?

それは、クレイマー自身が彼の投資術を惜しみもなく視聴者に教えているからである。ホストを勤める「Mad Money」は米国東海岸時間午後6時、プライムタイムに始まる。彼一人が1時間ひたすら、今日のマーケットや個別株について大きな声でしゃべりまくる番組だ。たまに大手企業CEO、例えばスターバックスCEO、ハワード シュルツ、などをゲストによんでトークすることもある。


彼が推奨した株は、次の日の市場で影響を与えることも少なくない。特に2005年に番組が始まった頃は、彼が個別の株を推奨すると、次の日にその株が大幅上昇することが頻繁にあった。特に彼に推奨された小型株(Small-Cap)から中型株(Mid-Cap)では、10%以上がることもあたりまえで、クレイマーの人気は全米の投資家に広まった。例えば、当時の中型株でGame Stop (NYSE: GME)
という会社があった。その株が推奨されると次の日に、10%近く上がることがあった。


番組の前半が終わると、「Lightning Round」が始まる。5分ほどの間に視聴者から電話を受け、個別株についての質問をクレーマーが「買い」か「売り」かを簡単に答えるコーナーだ。例えば視聴者から「アップルは買いか?」と聞かれると、クレイマーが「買いだ!」と大声で答える。BGMもユニークで、戦場(証券市場のフロアー)にいるような雰囲気だ。

とにかくクレイマーがシンプルにどの個別株やどのセクターが買いか、売るかを説明してくれるので、この番組は投資家の間で重宝される。また、彼の投資術を1時間かけて説明してくれる時もある。彼の投資術をいくつかあげてみよう: 

  
>パニックに陥ったら1円も作れない。パニックになって株を売ることは投資術ではないし、その行動は損失を増やすだけだ。

>リミットオーダー(指し値)を活用しよう。人々がスーパーで買い物をするように、棚に並んでいるものは値段が決まっているもの。自分で好きな値段を選ぶことが重要だ。

>一つの株を、一回で全部買わない。例えばスターバックス100株を買うとき、一気にまとめて100株買わず、2回、3回に分けて購入する。

>分散投資は唯一の無料ランチだ。一つの株、一つのセクターのみへの投資はリスクを増やすだけだ。

>一株1時間のホームワークが必要だ。もし一株持っていたら、その株について週に1時間、5株持っていたら週に5時間の勉強をすること。

>ブルとベアーはお金を作ることができるが、ピッグは叩かれる。ブルは角を上に押し上げる牛に重ねて、強気な相場を意味し、マーケットが上昇する意味。ベアーは熊で、その逆で弱気相場を意味する。ピッグは、豚のように食べてばかりでは、マーケットに叩かれること。ようするに、ブルとベアーは投資で成功するが、欲が深いピッグは投資で成功しない。

単純に見えるが、これが初心者の投資家に対して、クレイマーからのレッスンだ。この基礎的なレッスンを無視して、投資に失敗する人も多い。私自身も彼のアドバイスを無視して、一度大きな損失を出したことがある。


2005年4月、私はアップルを50株ほど保有していた(2005年2月28日に2:1分割、2014年6月9日に7:1分割、現在で350株)。その当時2:1分割の好感もあってか、20%以上の利益を得ていた。また、4月13日にアップルの第2四半期業績発表を控えていた時である。私はアップルがコンセンサスよりも大幅な収益を発表すると期待し、その数日前に他の株を売って、アップルを100株追加購入した。合計150株(現在では1050株、当時のアップル株は約40ドルほどだったので、150株x40ドルで6,000ドル)保有して挑んだその業績発表だが、その発表後から数日でアップル株は約20%下落した。私はパニックになって1,000ドル以上の損失を確定することになった。ちなみに、アップル株は2005年末までに100ドルまで上昇した。

私はクレイマーの3つのレッスンを破ったことになる。1つ目は、他の株を売ってアップル株に集中させ、分散投資をしなかったこと。2つ目は、パニックになったこと。もし、アップル50株のみ持っていて、パニックにならず売らなければ、今350株持っていることになる。現在の市場価値だと、40,000ドル近くになる。3つ目は、私自身が欲に埋もれたピッグになってしまったこと。利益を得るチャンスがあったにも関わらず、もっと多くの株を買ってしまい、結局たくさんの損失を作ってしまったことだ。もし、そのときクレイマーの投資術を知っていたらそのようなことは起きなかっただろう。



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GPIFポートフォリオ構成とグローバル金融商品への投資

PictureCNBC Mad Moneyがオンエアーされて以来、たくさんのクレーマーの本が刊行された。右下のConfesions of a Street Addictは2002年の刊行だが、その当時からクレイマーはCNBCで人気のコメンテーターだった。
クレイマーは多くの本の著者でもある。ちなみに上記の彼の投資術は「Jim Cramer’s Real Money: Sane Investing in an Insane World」の本に記載されている。また、この本は日本で日本語訳でも出版されている(日本語名は「ジム クレイマーの株式投資大作戦」)。現在のグローバル化された金融マーケットでは、日本人でもアメリカ株や中国株などもほぼすべての証券会社を通して購入することができる。日本国民の年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、これから海外株式の保有率を増やすので、アメリカ株などの外国株は注目を得るだろう(「GPIFポートフォリオ構成とグローバル金融商品への投資」を参照)。

海外株の保有はリスクが高いというが、実際はどうだろう?正直、アメリカ株を海外株と考えるなら、それを保有することは日本株を持つことよりリスクが少ないことを意味するかもしれない。たしかに為替へのリスクがあるが、実際に現在の量的緩和政策が失敗に終わり、アメリカ経済の回復が続けば円を保有すること自体が大きなリスクになる。逆にアメリカ人投資家にとって、日本株のような海外株の保有自体がリスクと考え、彼らのポートフォリオの中でそれらのウエイトを小さくしている。

これから日本人はアメリカ株への投資は絶対に必要になってくる。そのためにもアメリカの株式やそれに対する投資術を習わなければならない。その勉強法として最適なのは、プロの投資術を惜しみなく教えてくれるジム クレイマーかもしれない。私自身の投資術の原点は彼から教わった投資術だし、今でも同じだ。

彼の本の中で一つだけ絶対に忘れられない一文がある。「Investment is a bet on the future, not the past.」直訳すると、「投資は将来の賭けであって、過去ではない」。2005年のアップルの業績発表がその例だ。そのときアップルは過去最高の売り上げ、利益を発表し、アナリストの期待を遥かに上回った。しかし、発表後アップル株は大幅下落となった。私はなぜ株価が20%も下落したのかが全く分からなかったし、パニックになってたくさんの損失を出すことになった。その後、彼の本を読んでその言葉を知った。たしかにアップルは過去最高の利益を得たが、しかし業績発表の中でアップルは将来(次の第3四半期)の利益は今回の四半期より少なくなると発表し(第2四半期の一株あたり利益は0.34ドル、次回第3四半期の一株あたり利益の予想は0.28ドル)、それは市場予想を下回る結果だった。株価のプレミアムは将来の成長性なので、このニュースが出回ったときには、アップル株は急落していた。まさしく、クレイマーが言ったように、株価は将来への賭けであって、過去の業績ではない。それが、アップル株が大幅に下落した理由だ。

その言葉は今現在に至って、私の投資レベルを格段に上げてくれた。2005年末、私は東海岸にゴールドマンサックスのトレーディング部門の面接に行く機会があった。それは、私にとっての初めての就職面接で、憧れの日でもあった。第1面接を行ってくれたのは、トレーディング部門のVP、Kirtman氏だった。面接の中で、ジム クレイマーについて話す機会があった(実際は自分でその話しを持ち上げたのだが)。その中で、私が投資で唯一犯したアップルの失敗談を話し、そして最後にこの言葉を言った、「Investment is a bet on the future, not the past」。すぐ後に、Kirtman氏は、握手とともに「すぐに次の面接に進みなさい」と笑顔で言ってくれた。

今までクレイマーから習ってきたことは、面接でも生かされることになった。ゴールドマンサックスのような世界をリードする投資銀行が、私の言ったクレーマーのその一文を真剣に聞いてくれた。クレイマーの投資術や、彼自身はそれだけウォールストリートに影響があるということだ。間違いなくウォールストリートも彼の言動を敏感に反応し、株式市場を動かしている。そのようなプロの投資家から惜しみもなく投資術を習えることは素晴らしいことだ。ちなみに、クレイマーが出演しているCNBC 「Mad Money」は毎日iTunesで無料ダウンロードすることができる。残念ながら英語のみだが、そのクレイマーの雰囲気だけでも楽しんでほしい。このウェブサイトもクレーマーから習ったことをベースにして、そこから私自身で現在の経済状況を参考にして記事を書いている。ぜひ他の記事も読んでほしい。

年に数回ニューヨークへ行くが、いつも立ち寄る場所がある。ウォールストリートにあるニューヨーク証券取引所、そして必ず14 Wall Street街にあるビルの入り口を覗くことだ。そこには、The Street.Comのオフィスがあり、クレイマーが働いている場所だ。私にとっての目標は、毎年マーケットより高いパフォーマンスを作ることができるポートフォリオを構成すること。そして、いつかジム
クレイマー本人と投資について話しをすることだ。




ジム クレイマーの書いた主な書籍

Confessions of a Street Addict  (2002)
Jim Cramer’s Real Money: Sane Investing in an Inside World (2005)
Jim Cramer’s Mad Money: Watch TV, Get Rich (2006)
Jim Cramer’s Stay Mad for Life: Get Rich, Stay Rich (2007)
Jim Cramer’s Getting Back to Even: Your Personal Economic Recovery Plan (2009)
Jim Cramer’s Get Rich Carefully (2013)




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