原油価格の下落とエナージー関連株のパフォーマンス
2014年12月6日
Akira Kondo
車社会のアメリカにとってガソリン価格の下落は、消費拡大につながる。ウォールストリートジャーナル(米国版、12月8日 )によると、最近の原油価格の下落によって最低でも400億ドルが米国消費者のポケットに入るという。それは、一人当たり月々42ドル手に入ることになる。 もともと経済に占める7割が個人消費なので、今年に入ってからのリテールセールスの堅調さは納得できるかもしれない。毎年後半に新型iPhoneを市場に送り出すアップルやトヨタのアメリカ市場での健闘はガソリン価格の下落に後押しされたこともあるだろう。また、ターゲット、ウォルマート、ホームディポートなども売り上げを伸ばしている。
今年のマーケット(S&P500)のパフォーマンスも、昨年の30%よりは低いが、8%の上昇と悪くはない。セクター別に見ると、原油価格に影響されやすいトランスポーテーション(運輸関連、iShares ETF: IYT)が その下落によって大幅に上昇している。その代わりにエナジーセクター(iShares ETF: IYE)は大幅に下落している。これらのパフォーマンスはお互いにヘッジしている感じだ。 |
|
ちなみに日本は約3.5%の国内総生産(GDP)が原油の輸入額を占めているので、原油価格の下落は1.2%ほど日本のGDPに対する輸入額を押し下げる効果がある(12月8日Wall Street Journalより)。これは間違いなく日本経済にとって好影響だが、円安による輸入コスト増や消費行動の変化(例えば経済の先行き不安による貯蓄増)によって経済への影響が限られるかもしれない。
では、個別株の動きはどうだろう?まずエナジーセクター全体が下降傾向なので、個別株はオフショア原油発掘関連株が特に足を引っ張っている感じだ。Ensco (NYSE: ESV)、Transocean (NYSE: RIG)、Weatherford (NYSE: WFT)がそのマーケットリーダーで今年7月からそれぞれ50%、63%、53%ほど株価が下がっている。そのなかでもEnscoは高配当で投資家から好かれていた株なので、これからのマーケット環境によって無配当になる可能性も少なくない。 リファイナリー、製油所はどうだろう?Chevron (NYSE: CVX)やPhillips 66(NYSE: PSX)がよく知られている会社だろう。これらの株はアメリカで運転していると頻繁に目にするガソリンスタンドなので、日本人でも知っている人も多いだろう(上記にある写真もChevronだ)。それらの株価も原油価格と一緒に動く傾向があり、それぞれ過去6ヶ月で、20%、21%ほど下落している。 |
|
ChevronとPhillips 66は 時価総額が高く(とくにChevron)、高配当で人気株だ。後者はもともと石油発掘大手ConocoPhipplips の傘下にあり、数年前にスピンオフされた会社になる。これからリファイナリーを中心として企業価値を高くしていくだろう。
オフショアとリファイナリーは同じエナジーセクターに属するが、それらの株価の動きは、特に下落率の幅は、顕著に現れていることに気づくだろう。特にオフショア関連株の過去6ヶ月の下落率は、リファイナリー関連の2倍以上、または3倍近く下落している。 ガソリンスタンドなどを持つChevronなどは、原油価格の下落によって日々の生活で車を使用する人が増え、給油に来る客が増える。またその下落によって消費が増え、新車販売台数増につながり、ガソリンの需要も増える。しかしオフショアで原油を発掘する企業は、原油価格が下落している中で数千億円かけて深海から原油を発掘しなければならないし、またそれが供給過剰になり一段と価格の下落を後押しする。原油価格の動向に左右されるオフショア関連株は、その価格が下落傾向にある時は株価も下がる。 シェールガス発掘テクノロジーの発展や中国経済減速などは、今エナジーセクター関連株の大きな向かい風になっている。しかし、ポートフォリオ構成で必要なのは「分散投資」。オフショア関連株の保有は好まれないが、高配当を払うリファイナリー関連株ならエナジーセクターの一つとして保有していてもいいかもしれない。 Akira Kondo is long ESV. |